ガス缶(ボンベ)に直接つなぐシングルバーナーを、風よけのために風防で囲うのは危険だ。NITE(製品評価技術基盤機構)は再現映像で「ボンベが過熱されることで、接続部が溶けて漏れたガスに引火したり、ガスが漏れていなくてもボンベ内の内圧が高まって破裂するおそれがあります」と注意している。
メーカーも同じことを書いている。SOTOのレギュレーターストーブ ST-310の取扱説明書は「風よけのためでも」囲まないよう求め、プリムスは「バーナーを風防、天ぷらガード、積石等で絶対に囲まないで下さい」としている。
ここに書いた注意の文言は、NITE、日本ガス石油機器工業会(JGKA)、新富士バーナー(SOTO)、イワタニ・プリムス、岩谷産業の公式サイトと取扱説明書に載っているものだ。
風防で囲うと熱がこもり、ボンベが過熱して引火・破裂のおそれ
NITEの注意喚起映像「カートリッジガスこんろ 3.風防で囲むことの危険」は、ブロックで囲んだこんろのボンベが熱せられ、接続部から漏れたガスに引火する様子を再現している。解説は次のとおりだ。
カートリッジガスこんろの周りを風防で囲ってしまうと、調理器具からの放射熱が内部にこもり、ボンベが過熱されることで、接続部が溶けて漏れたガスに引火したり、ガスが漏れていなくてもボンベ内の内圧が高まって破裂するおそれがあります。
NITEのポスター「アウトドア調理時のNG行動」でも、最初の項目が「カートリッジガスこんろを囲う」だ。「熱がこもって、ボンベが過熱されて」、「ガス漏れによる引火」「ボンベ破裂」のキケンがあるとしている。
イワタニ・プリムスは事故例として、ガスこんろにガスカートリッジを接続し「市販の風防で囲んで調理していたところ、突然ガスカートリッジが破裂した」ケースを公式サイトに載せている。
SOTO・プリムス・JGKAは、風よけのためでも囲まないよう書いている
囲うことについての各資料の書き方を並べる(イワタニの行以外は原文のまま)。
| 資料 | 囲うことについての記載 |
|---|---|
| SOTO ST-310 取扱説明書 | 風よけのためでも石やブロックおよび板等で全面を囲んでの使用は容器(ボンベ)が過熱し、非常に危険ですのでおやめください。 |
| プリムス「ガス燃焼器具の安全な使い方」 | バーナーを風防、天ぷらガード、積石等で絶対に囲まないで下さい。 |
| JGKA「アウトドア用ガス器具の安全な使い方」 | 風よけのためであっても、ガス器具及びガスカートリッジ全体を囲み、ガスカートリッジが過熱するような使用をしない |
| イワタニ CB-JCB 取扱説明書 | 「囲う」を名指しした項目は見当たらない。ボンベ全体を覆う大きな調理器具の禁止と、「風防は補助機能」の注意がある(次の見出し) |
プリムスは理由を「バーナーを風防や積石等で囲みますと熱が集まって滞留し、カートリッジも加熱されてしまいます。カートリッジは加熱されると内部圧力が急激に上昇し爆発します。」と説明している。市販の風防でも、石やブロックでも、囲えば同じことが起きるという書き方だ。
SOTOの「全面を」、JGKAの「全体を」は、すき間をあければ囲ってよい、という意味ではない。プリムスは囲うこと自体を禁じ、NITEも、こんろの周りを囲うことを条件をつけずに注意している。
イワタニの説明書に囲う項目がないのも、CB-JCBなら囲ってよい、という意味ではない。同じ説明書は、ボンベが過熱し爆発の原因になる使い方として、「容器(ボンベ)全体を覆ってしまう大きな調理器具」の使用と、「アルミホイルなどで、ごとくや焼き網等を覆ったりして使用しない」ことを挙げている。
「付属の風防・遮熱板があるから囲ってよい」ではない
誤解されやすいのが、バーナーに最初から付いている風防や遮熱板との関係だ。イワタニのジュニアコンパクトバーナー CB-JCBは本体に風防があるが、取扱説明書はこう断っている。
風防は補助機能で、完全に風をさえぎるものではありません。強い風のときに使用すると、バーナーの炎が本体に巻き込み、事故、本体焼損の原因となります。
SOTO ST-310には遮熱板が付いているが、説明書は「遮熱板は必ずボンベに接触させてご使用ください。」とし、正しく付けないと「異常過熱により、遮熱板の変色ややけどの危険があります。」としている。遮熱板があれば何をしてもよい、という書き方ではない。
さらにSOTOは「鉄板、焼き網、セラミック製品、スモーカー等の補助具は指定のもの以外は使用しないでください。」、プリムスは「製品に付属した補助具以外は絶対に使用しないでください。」としている。後から風防で囲うことを認めた取扱説明書は、今回確かめた中にはなかった。付属の風防や遮熱板があっても、さらに囲わない。
大きな鍋・鉄板、2台並べも同じ「ボンベの過熱」
ボンベが熱くなるのは、囲ったときだけではない。CB-JCBの説明書は、ボンベが過熱し爆発の原因になる使い方として次を挙げる。
- 容器(ボンベ)全体を覆ってしまう大きな調理器具(鍋、鉄板、ジンギスカン鍋、たこやき鉄板、魚焼き器等)は使用しない
- 2台以上並べて使用しない
- 炭の火起こしなどの用途には使用しない
CB-JCBが使える鍋の大きさは「目安として18cm鍋まで(鍋底が16cm以下)」だ。SOTO ST-310の説明書は「セラミック付焼網、大きい鉄板等、輻射熱の大きい調理器具は絶対に使用しないでください。」、プリムスは「1つの調理器具に2つ以上のバーナーを使用しないで下さい。(片側のみ使用の場合は特に危険です。)」としている。プリムスはさらに「シングルバーナーにセラミック製品、鉄板や焼き網等を使用しないで下さい。」と、大きさを問わず鉄板を禁じている。
消費者庁も2022年8月26日の注意喚起で「カセットこんろを2台以上並べたり、大きな調理器具をのせて使用しないでください。熱がこもりカセットボンベが過熱されて破裂するおそれがあります。」としている。
NITEは2016年7月の発表で、2口のこんろに大きな鉄板を載せて使った後、ガスカートリッジを外したところ漏れたガスに引火し、テント2張が焼損した事例を挙げ、「カートリッジガスこんろを覆うような鉄板や鍋は絶対に使わないでください。」と求めた。2024年12月の発表では、2014〜2023年度の10年間にNITEへ通知されたカセットこんろの事故は91件で、調査が完了した86件のうち誤使用・不注意が推定されるものが約4割としている。
一体型と分離型の違いについても、分離型なら囲ってよい、大きな鉄板を載せてよい、と書いた資料は今回確認したものの中になかった。分離型でも、そのバーナーの説明書の禁止事項に従う。
風が強い日は、囲わずに「使わない」
風で火が消えるから囲う、という発想そのものを、メーカーは取っていない。SOTOは「強い風が吹くときは使用しないでください。風で炎が消される危険があります。」、イワタニは「強い風のところでは使用しない」としている。
置き場所の距離も説明書に数字がある。
| 資料 | 置き場所の記載 |
|---|---|
| イワタニ CB-JCB | 可燃物から周囲15cm以上、上方は100cm以上離す。火気から2m以上離す |
| SOTO ST-310 | 燃えやすいものからは、30cm以上離す |
| プリムス | 燃えやすい物から上部は1m以上、周囲は30cm以上離す |
焚き火など火気のそばに置かない、夏の砂浜や舗装路面などボンベが熱くなる場所で使わない、という注意も各社に共通している。風を避けたいときは、囲いを作るのではなく、風の弱い開けた場所を選ぶか、その日は使わない。
テントの中では使わない(起きている間でも)
風よけのためにテントの中や前室、タープの下へ入れる、という使い方もしてはいけない。各社の説明書はそろって屋外専用としている。NITEも一酸化炭素中毒について「特にテントの中やフライシートの下では絶対に使用しないでください。」と注意している。
- イワタニ CB-JCB:「本商品は屋外専用です。テント内や車内など狭い場所では絶対に使用しないでください。」
- SOTO ST-310:「屋外専用ですので家の中、テントの中、車の中では絶対に使用しないでください。一酸化炭素中毒死や酸欠による窒息死のおそれがあります。」
- プリムス:「プリムスの器具は屋外使用専用です。屋内、テント内、車内では絶対に使用しないで下さい。」
- JGKA:「テント内ではランタン、こんろ等のガス器具を絶対に使用しない」
寝るときだけの話ではない。起きている間でも、テントの中では使わない。屋外で使うときも、ここまでに挙げた「囲わない」「大きな鍋や鉄板を載せない」「並べない」を守る。屋外ならどんな使い方でも安全、ということではない。
使う前に、手元のバーナーの取扱説明書を開き、「過熱」「風防」「鍋の大きさ」の項目を確かめておきたい。わからないときは、メーカーの窓口に問い合わせる。
情報源
- NITE「カートリッジガスこんろ『3.風防で囲むことの危険』」(注意喚起動画・ポスター) https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/nenshou/2023072701.html(動画はNITEのYouTubeチャンネルで2023年7月27日公開。ページに日付の表記はない。2026年10月3日に閲覧)
- NITE ポスター「アウトドア調理時のNG行動」(PDF) https://www.nite.go.jp/data/000150209.pdf(2026年10月3日に閲覧)
- NITE「カセットこんろなど、キャンプ等で使われる製品の事故にご注意ください」(平成28年7月28日) https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2016fy/prs160728.html(2026年10月3日に閲覧)
- NITE「“NO MORE ボンベ破裂”~約4割が誤使用・不注意 『カセットこんろの事故』を防ぐ3つのポイント~」(令和6年12月26日) https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2024fy/prs241226.html(2026年10月3日に閲覧)
- NITE「増加するキャンプ需要 ~初心者が守るべき注意点~」本文資料(2021年4月28日、PDF) https://www.nite.go.jp/data/000138994.pdf(2026年10月3日に閲覧)
- 消費者庁「携帯発電機・カセットこんろ・モバイルバッテリーの使用にご注意ください」(2022年8月26日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_063/(2026年10月3日に閲覧)
- 日本ガス石油機器工業会「アウトドア用ガス器具の安全な使い方」 https://www.jgka.or.jp/gasusekiyu_riyou/anzen/gasu_okugai/index.html(2026年10月3日に閲覧)
- 新富士バーナー SOTO「レギュレーターストーブ ST-310」製品ページ https://soto.shinfuji.co.jp/products/st-310/(2026年10月3日に閲覧)
- 新富士バーナー SOTO「レギュレーターストーブ ST-310 取扱説明書」(PDF) https://soto.shinfuji.co.jp/wp-content/uploads/products/ST-310_manual_R0426.pdf(2026年10月3日に閲覧)
- イワタニ・プリムス「ガス燃焼器具の安全な使い方(注意喚起)」 https://www.iwatani-primus.co.jp/camp.html(2026年10月3日に閲覧)
- イワタニ・プリムス「ガス器具の事故・火災例と当社の安全に関する取り組みについて」 https://www.iwatani-primus.co.jp/safty.html(2026年10月3日に閲覧)
- 岩谷産業「カセットガス“ジュニアコンパクトバーナー”」製品ページ https://www.iwatani.co.jp/jpn/consumer/products/cg/burner/cb-jcb/(2026年10月3日に閲覧)
- 岩谷産業「イワタニカセットガスジュニアコンパクトバーナー CB-JCB 取扱説明書」(PDF) https://www.iwatani.co.jp/jpn/consumer/products/cg/support/manuals/list/pdf/manual_pdf72.pdf(2026年10月3日に閲覧)









