環境省が2026年9月9日に更新したクマ類の出没情報(速報値)で、今年度4〜7月の出没件数は1万7,362件になった。昨年度(令和7年度)の同じ4か月は1万2,716件で、約1.4倍(36.5%増)にあたる。
人身被害は今年度8月までの速報値で56件・60人、うち死亡6人。昨年度の傾向では、出没件数は10月が年間でいちばん多く、これから出没が増える時期に入る。
ここに書いた数字は、環境省「クマに関する各種情報・取組」に載っているPDFから取った。キャンプでの対策は、環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」と、上高地・小梨平キャンプ場の公式規約に書かれていることだけを並べている。

4〜7月の出没は1万7,362件、前年同期の約1.4倍
環境省のPDF「クマ類の出没情報について[速報値]」(令和8年9月9日)から、月ごとの全国計を並べた。
| 月 | 令和7年度(2025) | 令和8年度(2026) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 800件 | 1,788件 | 約2.2倍 |
| 5月 | 2,528件 | 4,582件 | 約1.8倍 |
| 6月 | 4,227件 | 6,257件 | 約1.5倍 |
| 7月 | 5,161件 | 4,735件 | 約0.9倍 |
| 4〜7月計 | 12,716件 | 17,362件 | 約1.37倍 |
前年比は、表の数字から編集部が計算した。4月は2倍を超えたが、7月だけは前年を下回っている。「どの月も前年より多い」わけではない。
読むときの注意が3つある。まず北海道は含まれていない。PDFの注に「北海道は、出没数の公表は行っていません」とある。次に、九州・沖縄8県は「クマが生息していないので、調査外」。そして数字は都道府県から聞き取った速報値で、集め方も「警察への通報件数、市町村からの情報など」県ごとに違い、「データは変更することがあります」と書かれている。
環境省のページによると、出没情報は令和8年7月までの速報値で、翌月末をめどに掲載される。9月27日に閲覧した時点で、8月以降の出没数はまだ載っていない。
昨年度の出没は10月が最多、人身被害も例年10月が山
同じPDFで昨年度(令和7年度)の秋を見ると、9月4,766件、10月1万5,998件、11月1万338件。年度計5万801件のうち、10月だけで3割ほどを占める。
環境省のマニュアル概要版には、秋の出没件数は「堅果類の豊凶に大きく左右されます」とある。人身被害の発生時期についても「秋に向けて増加して10月に最も多くなっていました」と書かれている(マニュアルは令和3年3月の改定版)。令和7年度の人身被害の月別表でも、10月の78件が最多だった。今年の秋がどうなるかの見通しは、今回見た資料には記載がない。
人身被害は今年度8月までに56件・60人、うち死亡6人
環境省「R08年度におけるクマの人身被害件数[速報値]」(令和8年9月9日)では、4月6件、5月13件、6月19件、7月11件、8月7件で、計56件・被害者60人・死亡6人。昨年度は通年で216件・238人・死亡13人だった。
なお、同じ日に更新された年度一覧のPDFでは、この56件・60人の列の見出しが「R08年7月末」のままになっている。ただ、県別の数字には8月の被害(静岡県の1件など)が含まれ、合計も月別表の4〜8月の計と一致する。ページ本文も「人身被害件数は令和8年8月までの速報値」としているので、56件・60人は8月までの数字だ(7月末までなら49件・53人になる)。
死亡事故の一覧(令和8年7月10日現在)には6件が載り、場所は岩手県紫波町・八幡平市・西和賀町、山形県酒田市、秋田県秋田市、青森県青森市。北海道の今年度の人身被害は2件・2人(死亡0人)となっている。

食べ物とゴミをテントまわりに置かない
環境省のマニュアルは、クマの生息域で人が多く集まる場所について「残飯等の処理が不適切な場合、クマ類を誘引することになります」と書く。キャンプ場の管理者向けには、次の対策を挙げている。
- 管理棟がある場合は、食料や生ゴミを管理棟で預かる(屋内保管)
- 密閉できる蓋付きの容器(フードロッカー)を設置し、そこで保管する
- クマ対策ゴミ箱を設置する、またはゴミ箱にクマ対策をする
- テントサイト、食事・炊事場、フードロッカーを「それぞれ60m以上、できれば100m」離して配置する
- 必要に応じて、テントサイトや食事・炊事場、フードロッカーを電気柵で囲うことも検討する
利用者の側に向けては、アウトドア目的の入山者への注意として「残飯などクマの誘引物となるものは必ず持ち帰りましょう」とある。食料はキャンプ場に食料庫や預かりがあればそれを使い、残飯やゴミは持ち帰る(キャンプ場の決まりがあればそれに従う)。ゴミの扱いはキャンプ場ごとに決まりがあるので、予約時に確かめておきたい。ふだん使うゴミ箱の選び方はキャンプにおすすめのゴミ箱の記事にまとめているが、クマ対策の性能を比べたものではない。
上高地・小梨平は「クマ対策でBBQ禁止」、ゴミ捨ては21時まで
キャンプ場の実際の規約として、長野県松本市の上高地・小梨平キャンプ場の公式ページを見る。環境省マニュアルにも、上高地ではホテルやキャンプ場がゴミや食料を「屋内または頑丈なコンテナやフードロッカー等で保管」している事例として載っている。
| 項目 | 公式規約の記載 |
|---|---|
| ゴミ | 就寝時間(午後9時)までにゴミ捨てを完了し、テントの中、外には置かない |
| 食料 | 当日必要のない飲食料(水以外)は食料庫に置き、テントの中、外には置かない |
| BBQ | クマ対策によりキャンプサイト全面禁止 |
| 炭コンロ | クマ対策により調理用としての使用はできない |
| 焚き火 | 直火・焚火禁止、焚き火台は使用禁止。マキは炊飯棟内限定 |
| 講習 | 上高地ビジターセンターのクマ講習会(野生動物レクチャー)の受講を求めている |
BBQと炭コンロは「クマ対策により」と理由が明記されている。焚き火の禁止は同じ規約に並んでいるが、クマ対策が理由だとは書かれていない。規約は「令和5年3月24日一部改正」で、「ご利用の際にご確認を」とある。問い合わせ先は森のリゾート小梨(TEL 0263-95-2321、冬期 0263-94-2536)。
秋に山あいのキャンプ場へ行く計画なら、営業終了日もあわせて見ておきたい。尾瀬のキャンプ場は3か所とも10/24(土)泊までだ。
鈴やラジオは「過信しない」と書かれている
環境省マニュアルは、すべての入山者に「鈴やラジオなど音が鳴るものを携帯しましょう」とすすめる。ただし目的は「人の存在・接近をクマに知らせ、突発的な遭遇を避けるための装備」で、「過信はせず、常に周囲に気を配ることを忘れてはいけません」と続く。
政府広報と環境省のチラシ「クマに出会わないための6ヶ条」(山菜採り向けのチラシだが、内容は山に入る人すべてに当てはまる)も、「立ち止まると鈴は鳴らない点にも要注意」としている。6ヶ条は、出没情報を事前に確認する、1人で行動しない、早朝・夕方を避ける、ラジオや鈴を鳴らし続ける、常に周りを注意する(クマは木登りが得意なので頭上にも)、痕跡を見つけたら静かに立ち去る、の6つ。マニュアルにも「悪天候や夕暮れ時は人とクマがお互いの存在に気付きにくくなる」とある。
身につけて持ち歩く物のうち、音の出る物以外でクマが避けるかどうかは、今回見た環境省の資料には記載がない。

クマを見たら走って逃げない
マニュアルの「クマ類に遭遇した際にとるべき行動」は、距離で分けて書かれている。
| 状況 | 環境省マニュアルの記載(要旨) |
|---|---|
| 遠くにいる | 落ち着いて静かにその場から立ち去る。急に大声をあげたり急な動きをしたりしない |
| 近くにいる | クマを見ながらゆっくり後退するなど、落ち着いて距離をとる。「慌てて走って逃げてはいけません」 |
| 至近距離で突然 | 両腕で顔面や頭部を覆い、直ちにうつ伏せになるなどして、重大な障害や致命的ダメージを最小限にとどめる |
| 子グマだけがいる | 近くに母グマがいる可能性が高いので、近づかず速やかに離れる |
至近距離の項には「攻撃を回避する完全な対処方法はありません」とも明記されている。クマ撃退スプレーは「携帯も推奨されます」とされ、使うときは顔に向けて噴射する、射程は「5m程度と短い製品が多い」、いざという時にすぐ使える場所に携帯し、事前にトレーニング用スプレーなどで練習する、とある。風向きによっては噴射した本人にも影響がある点も書かれている。
スプレーについては、より新しい注意もある。環境省は令和8年8月に「クマ撃退スプレーの性能に係る推奨要件」を公表し、消費者庁は2026年8月25日の「クマ撃退スプレーの備え方」で、次のように書いている。
- 「クマ用、かつ、撃退用のスプレーを選ぶ(対人用や忌避を目的としたスプレーは選ばない)」
- 「5~10m程度クマとの距離を置いた状態で噴射する」
- 「原則として、クマよりも風上から使用する。風下では極力使用しない」
- 「1~3秒程度の噴射が複数回できるよう、原則、使いかけを使用しない」
政府広報オンライン(2026年9月10日)は、スプレーが有効なのは「クマが目の前に迫っているとき」で、「寄せ付けないためのものではありません」としている。
同じ政府広報の記事(環境省取材協力)は、遭遇したときにやめる行動として、食べ物が入っていると餌付けにつながるおそれがあるため「リュックやかばんを置いて逃げる」ことを挙げている。近くに車や建物があれば、車内や屋内など身を守れる場所に避難する。防御姿勢は、うつ伏せになって顔や胸、腹部を守り、「手指を組み合わせて、後頭部と首の後ろを守る」と説明している。
出かける前に、行き先の県の出没情報を確かめる
マニュアルは、アウトドア目的で入山する前に「都道府県や市町村が公開しているクマに関する注意・普及啓発のためのウェブサイトなどを確認」するよう求めている。環境省の「国民向けのクマに関する情報」に、北海道から徳島県まで都道府県ごとの出没情報ページへのリンクがまとまっている。東北・新潟・北海道の各県が出している警報・注意報の発令状況は、クマ出没警報・注意報の県別一覧にまとめている。
新しい痕跡(糞、足跡など)を見つけたら「安全策を取り、引き返しましょう」。キャンプ場に着いたら、食料庫の場所とゴミを出せる時刻を最初に確かめる。上の数字は速報値で、環境省は人身被害を翌月第一週、出没数を翌月末をめどに更新するとしている。
情報源
- 環境省「クマに関する各種情報・取組」 https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html(2026年9月27日に閲覧。出没・人身被害のPDFは令和8年9月9日更新)
- 環境省「クマ類の出没情報について[速報値](直近5カ年)」(令和8年9月9日) PDF(2026年9月27日に閲覧)
- 環境省「クマ類による人身被害について[速報値]」(令和8年9月9日) PDF/「R08年度におけるクマの人身被害件数[速報値]」 PDF(2026年9月27日に閲覧)
- 環境省「令和8年度のクマによる死亡事故数等」(令和8年7月10日現在) PDF(2026年9月27日に閲覧)
- 環境省「クマ類の出没対応マニュアル-改定版-」(令和3年3月) https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-4a/(概要版・I章「出没に備える」・III章「クマ類に遭遇した際にとるべき行動」。2026年9月27日に閲覧)
- 政府広報・環境省「山に行くみなさん!クマにご注意を!(6箇条)」 PDF(2026年9月27日に閲覧)
- 消費者庁「クマ撃退スプレーの備え方」(2026年8月25日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_087/(2026年9月27日に閲覧)
- 環境省「クマ撃退スプレーの性能に係る推奨要件」のお知らせ https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-oshirase-r080825.html(2026年9月27日に閲覧)
- 政府広報オンライン(2026年9月10日、環境省取材協力) https://www.gov-online.go.jp/article/202609/entry-11625.html(2026年9月27日に閲覧)
- 環境省「国民向けのクマに関する情報」 https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/kuma-info-citizen.html(2026年9月27日に閲覧)
- 上高地公式ウェブサイト「小梨平キャンプ場」 https://www.kamikochi.or.jp/enjoy/campsites/1173/(規約は令和5年3月24日一部改正。2026年9月27日に閲覧)









