冬の車中泊で命に関わる一酸化炭素中毒は、主に2つの原因で起きる。エンジンをかけたままの車に排気ガスが入り込むことと、車内でストーブやこんろなどの燃焼器具を使うことだ。JAF(日本自動車連盟)の実験では、ボンネットの上まで雪に埋まった車でエンジンをかけ、エアコンを外気導入にしたところ、車内の一酸化炭素(CO)濃度は16分後に400ppm、その6分後には測定上限の1,000ppmに達した。雪がなくても、車メーカーのスズキは「周囲の状況や風向きで排気ガスが車内に侵入し、一酸化炭素中毒のおそれがあります」として、エンジンをかけたまま仮眠しないよう警告している。
車内での燃焼器具について、製品事故を調べているNITE(製品評価技術基盤機構)は「テント内や車内などでは、石油ストーブなどの石油器具やガスこんろなどのガス器具は使用しないでください」と書いている。一酸化炭素チェッカー(警報器)を置けば使ってよい、という例外はない。凍えないための備えは、エンジンを止めたまま寝具と服装で行うのが基本になる。ただしJAFが、立ち往生で車内に取り残される場面を想定してエンジンを止めた車で行った実験では、冬山用の寝袋を使った人も外気温−12.9℃の中で「なんとか一晩耐えることができた」という結果だった。
この記事は、以前の内容を公的機関の資料に沿って書き直したものだ。以前は燃焼系の暖房を車内で使わないよう書いた直後に「どうしても使用したい場合は一酸化炭素チェッカーとの併用が必須」とも書いていた。これは取り消す。ここに書いた数字と注意事項は、JAF・NITE・国民生活センターの公表資料と、スズキ・警報器メーカーの公式ページ・取扱説明書に載っているものだ(2026年9月27日に閲覧)。

雪に埋まった車では、車内のCOが十数分で危険な濃度になる
エンジンの排気ガスには一酸化炭素が含まれる。JAFは「一酸化炭素は空気より軽く、無色・無臭・無刺激の気体です。そのため発生に気付かないことが多く、危険の察知が非常に難しい有毒ガスです」と説明している。
JAFは2015年2月16日、北海道旭川市で、同じ車2台を雪で埋めてエンジンをかけ、車内のCO濃度を測る実験をしている。雪はマフラーの高さから、さらにボンネットの上まで被せた。エアコンはどれも外気導入だ。結果は次のとおり。
| 条件 | 車内のCO濃度(JAFユーザーテスト) |
|---|---|
| 対策なし(マフラー周辺も雪のまま) | 開始直後から上がり、16分後に短時間暴露限度の400ppm、その6分後に測定上限の1,000ppm |
| マフラー周辺を除雪 | 「終始COはほとんど検知されなかった」 |
| 除雪せず、窓を5cmほど開ける | 5分で100ppm台、増減をくり返したのち約40分後に400ppm、その後すぐ800ppm台 |
除雪した車の車内でCOがほとんど検知されなかったのは、この日の条件での結果だ。JAFは「車の周囲の状況や風向き、エアコンの設定などで変わるため、今回安全だった条件でも危険になる場合があります」と添えている。
JAFは1,000ppmを、身体への影響が「3時間ほどで致死」という非常に危険な状態だと説明している。窓を少し開けても安全にはならなかった点に注意したい。JAFは「風が止むと濃度が『2時間で失神』する危険レベルまで上昇しました」と書いている。
排気ガスが入ってくる経路も確かめられている。発煙筒で流れを見たところ、車の床下にたまった排ガスが車内に吸い込まれた。JAFは、空調を内気循環にしても「車体の隙間などから排ガスが車内に入る危険性があります」としている。
寝るときはエンジンを止める|スズキは「エンジンをかけたまま仮眠しない」
車のメーカーも、エンジンをかけたまま眠ることをはっきり戒めている。スズキは公式サイトのジムニー・ジムニー シエラの内装ページで、フルフラットにしたシートの写真のすぐ下に「エンジンをかけたまま仮眠しない」と警告し、理由を次のように書いている。
- 「周囲の状況や風向きで排気ガスが車内に侵入し、一酸化炭素中毒のおそれがあります。」
- 「無意識にチェンジレバーまたはセレクトレバーを動かしたり、アクセルペダルを踏み込んだりして、思わぬ事故を起こすおそれがあります。」
- 「無意識にアクセルペダルを踏み続けると、エンジンや排気管などが過熱して火災のおそれがあります。」
同社のアクセサリーカタログも、車中泊向けの品に「※安全のためエンジンをかけたまま車中泊を行なわないでください。」と書き添えている。排気ガスが入り込むのは雪の日だけではない。JAFも一酸化炭素中毒の実験の背景として「吹雪による停車時やスキー場での仮眠時に危険」と書いている。
雪の日については、JAFは、降雪時に車内にとどまる際は「できるだけエンジンを切るようにしましょう」と呼びかけている。天候によっては短時間で車が雪に深く埋まることがあるからだ。眠っている間は、マフラーのまわりに雪が積もっていくことに気付けない。
JAFは、立ち往生を想定した実験のまとめで「毛布などの用意がなくエンジンをかけて暖房を使う場合は、一酸化炭素中毒の危険を考えて、頻繁な換気や、マフラー周りの除雪が必要です」と書いている。これは寒さをしのぐ手段がないまま車内に取り残されたときの話で、車中泊で眠るときの暖房の方法ではない。車中泊を計画するなら、エンジンを止めたまま過ごせる寝具と服装を用意しておく。
JAFは2021年の実験で、雪で埋めたガソリン車を内気循環・オートエアコン25℃で動かし、乗員なしで車内の空気を測っている。一酸化炭素濃度は1分24秒で警報値の50ppmに達し、開始後18〜50分の間は測定上限の300ppmが続いた。酸素濃度も13分14秒で安全限界の18%を下回った。
車内で石油ストーブ・練炭・こんろは使わない|COチェッカーを付けても同じ
車内で燃焼器具を使うことについては、公的機関の書き方ははっきりしている。
- NITE(製品安全情報マガジン Vol.423、2023年2月28日):「テント内や車内などでは、石油ストーブなどの石油器具やガスこんろなどのガス器具は使用しないでください。一酸化炭素中毒や酸欠によって窒息し、死亡するおそれがあります。」
- NITE(同号、携帯発電機の事故について):排ガスがこもる場所として「物置・倉庫、車内、テント内など」を挙げ、「絶対に使用しないでください」
- 国民生活センター(見守り新鮮情報、2025年8月28日):携帯発電機について「屋外でも、自動車内やテント内で使用すると屋内と同様の危険があります」
以前この記事は「どうしても使用したい場合は一酸化炭素チェッカーとの併用が必須」と書いていたが、これは誤りだった。チェッカーは一酸化炭素を検知して知らせる道具で、発生を止めるものではない。警報器のメーカー自身が次のように書いている。
- 新コスモス電機(アウトドア用一酸化炭素アラーム CL-725 取扱説明書):「一酸化炭素の発生を未然に防止する装置ではありません」「この製品の使用により、テント内や車内などにおける火気の使用を推奨するものではありません。」
- DOD(キャンプ用一酸化炭素チェッカー2 商品ページ):「本製品はテントや自動車内における火気の使用を助長するものではありません。」
新コスモス電機は、アラームが鳴ったときの対応を「直ちに避難してください」と答えている。警報器の役割と限界は、テント内のストーブと一酸化炭素チェッカーについての記事で詳しく書いている。Sotopiaは、車内で石油ストーブ・練炭・炭・カセットこんろ・ガスストーブなどを使うことを、警報器の有無にかかわらず勧めない。寝るときだけでなく、起きている間でも車内では使わない。

エンジンを止めた車内は−7℃まで下がる|JAFの立ち往生テスト
エンジンを止めた車内はどこまで冷えるのか。JAFは2014年2月、長野県上田市の菅平高原で、夜11時から朝7時までの8時間、エンジンを止めたミニバンで対策の違う4人が寒さをしのげるかを確かめる実験をしている。想定したのは「吹雪や豪雪で車が立ち往生し、長時間車内に取り残される」場面だ。モニターには30分ごとに続けるかどうかを確認しており、眠って過ごす実験ではない。服装は全員ダウンジャケットとジーンズにそろえ、開始直前まで暖房で車内を25℃にしていた(テスト開始時の外気温−10.2℃、最低気温−13.2℃)。
| 対策 | 結果(JAFユーザーテスト) |
|---|---|
| 対策なし | 2時間45分後にギブアップ(外気温−11.1℃、車内温度1.8℃) |
| エマージェンシーシート | 5時間27分後にギブアップ(外気温−12℃、車内温度−3.9℃) |
| 毛布+使い捨てカイロ | 8時間経過して終了(外気温−12.9℃、車内温度−7℃) |
| 寝袋(冬山用) | 8時間経過して終了(同上) |
車内温度は朝には−7℃まで下がった。JAFのまとめは「「寝袋」と「毛布+使い捨てカイロ」の使用でなんとか一晩耐えることができた」で、寝袋のモニターは「朝方になって結構寒さを感じてきつかったです。冬の車中泊はできないかなと思いました。」と話している。JAFは「排ガスによる一酸化炭素中毒やガス欠の危険性を考えると、エンジンは止めたまま寒さをしのげる対策が必要である」としている。
この結果は、冬山用の寝袋があれば車の中で快適に眠れる、という意味ではない。起きたまま寒さに耐えた実験でも、朝方はきつかったという結果だ。真冬の車中泊を計画するなら、行き先の最低気温より余裕のある寝具をそろえたうえで、そもそもその夜に車中泊をするかどうかを見直すことも考えたい。
以前の記事にあった窓の断熱や床からの冷え対策(マットや断熱シート)は、寝袋の性能を生かすための補助として考えたい。ただ、どれだけ暖かくなるかを示す公的な数字は見当たらないため、この記事では効果の大きさは書かない。
カイロ・電気毛布は「寝ている間」の使い方に注意|NITEの注意喚起
JAFの立ち往生テストでは「毛布+使い捨てカイロ」で一晩耐えることができた。ただしこれは、30分ごとに確認しながら起きたまま寒さに耐える場面を想定した実験だ。いっぽうでNITEは、眠るときについてカイロを「就寝時には使わない」よう呼びかけている。車中泊で眠るときは、NITEの注意に従う。
- カイロ(NITE 2025年1月14日発表):「カイロを直接肌にあてない。」「就寝時には使わない。」「同じ部位にあたる状態で長時間使わない。」。NITEの製品安全情報マガジン Vol.468は、就寝時に使うと「布団の中で蓄熱するなどカイロが通常よりも高温になりやけどするおそれがあります」と理由を書いている。
- 電気毛布(NITE 製品安全情報マガジン Vol.493、2026年1月27日号):「電気毛布は就寝前にあたためたあと、就寝時には適度な低い目盛りに下げるなどして調節しましょう。就寝中はスイッチを切って眠りましょう。」
NITEによると、低温やけどは「44℃では 3~4 時間、46℃では 30 分~1 時間、50℃では 2~3 分」でなると言われている。以前の記事では「カイロを足の裏に貼って寝る」方法を勧めていたが、NITEの注意と合わないため取り消した。カイロは起きている間に使い、寝るときは外しておく。
電気毛布をポータブル電源で使う人もいる。国民生活センターは、ポータブル電源について「高温環境下での使用・保管は控えましょう」「衝撃を与えてしまった後、発熱や変形などの異常が生じた場合は、使用を中止し、製造・輸入・販売事業者に相談しましょう」と注意している。使い方は、機器ごとの取扱説明書を必ず確かめてほしい。
出発前にそろえるもの|JAFは「スコップや防寒着、毛布」
JAFは、冬場は万が一に備えて「除雪用のスコップや防寒着、毛布などを車内に用意しておくとよいでしょう」と書いている。車中泊の準備として、次の点を出発前に確かめておきたい。
- 寝具:行き先の最低気温に合った寝袋。毛布や防寒着も重ねられるようにする。
- 除雪用のスコップ:雪が降ったら、マフラーのまわりに雪がないかを確かめられるようにする。
- 車内に燃焼器具を持ち込まない:ストーブ・練炭・こんろは車内で使わない。調理は車の外の風通しのよい場所で、キャンプ場や施設のルールに従う。
- 天気予報:大雪が予想されるときは、車中泊の計画そのものを見直す。
JAFは、荒天時には「無理に外に出ないで、車内で天候の回復や救援を待ちましょう」とも書いている。車は外より暖かい避難場所になる。そのためにも、エンジンに頼らずに寒さをしのげる準備が欠かせない。車種ごとの寝床の作り方は、ジムニーの車中泊についての記事でも紹介している。
情報源
- JAF「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意(JAFユーザーテスト)」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/co-poisoning(2026年9月27日に閲覧)
- JAF クルマ何でも質問箱「雪で埋まった場合の一酸化炭素中毒の危険性とは?」 https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-natural/subcategory-snow/faq255(2026年9月27日に閲覧)
- JAF「大雪による車の立ち往生~車内環境の変化~(JAFユーザーテスト)」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/snow_car_environment(2026年9月27日に閲覧)
- JAF「冬の車内温度(JAFユーザーテスト)」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/winter(2026年9月27日に閲覧)
- NITE(製品評価技術基盤機構)「製品安全情報マガジン Vol.423 2月28日号『一酸化炭素中毒の事故』」2023年2月28日 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2022fy/vol423_230228.html(2026年9月27日に閲覧)
- NITE プレスリリース「就寝時の“足元”暖房にご用心!~電気あんか、カイロ、電気マットの取扱いに注意~」2025年1月14日 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2024fy/prs250114.html(2026年9月27日に閲覧)
- NITE「製品安全情報マガジン Vol.468 1月14日号『温活グッズの事故』」 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2024fy/vol468_250114.html(2026年9月27日に閲覧)
- NITE「製品安全情報マガジン Vol.493 1月27日号『電気マット、電気毛布、電気あんかの事故』」 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2025fy/vol493_260127.html(2026年9月27日に閲覧)
- 国民生活センター 見守り新鮮情報「災害時にも活躍 携帯発電機やポータブル電源の取り扱いに注意」2025年8月28日 https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen519.html(2026年9月27日に閲覧)
- 新コスモス電機「アウトドア用一酸化炭素アラーム CL-725 取扱説明書」 https://www.new-cosmos.co.jp/wp/wp-content/uploads/lv/cl725_tori.pdf、「COALAN」公式ページ https://www.new-cosmos.co.jp/coalan/(2026年9月27日に閲覧)
- スズキ「ジムニー 内装・装備」 https://www.suzuki.co.jp/car/jimny/interior/、「ジムニー シエラ 内装・装備」 https://www.suzuki.co.jp/car/jimny_sierra/interior/(2026年9月27日に閲覧)
- スズキ「ジムニー アクセサリーカタログ」(2026年4月版) https://www.suzuki.co.jp/accessory_car/jimny/book/index.html(2026年9月27日に閲覧)
- DOD「キャンプ用一酸化炭素チェッカー2(ブラック) CG1-559-BK」 https://www.dod.camp/product/cg1_559_bk/(2026年9月27日に閲覧)









