この記事は以前、アルコールストーブの自作を紹介していた。以前の記事の、自作ストーブの作り方と使い方についての記述は誤りだった。取り下げる。今は、自作のアルコールストーブを勧めない。
理由は、メーカーが示している安全上の注意が、メーカーが作った製品についてのものだからだ。炎が見えにくいこと、燃料の継ぎ足しは完全に消火して冷めてから行うこと、屋外で使うこと。この記事では、これらをトランギア、エバニュー、東京消防庁、NITE(製品評価技術基盤機構)の公式資料の文言で整理する。
引用した文言は、いずれも2026年10月4日に確認した公式資料に載っているものだ(NITEは10月3日保存の資料を再確認)。使う場所についての「テントの中・前室・タープの下では、起きている間でも使わない」は、このサイトの判断として書く。
自作のアルコールストーブは勧めない。以前の作り方の記述は取り下げる
以前の記事の、作りやすさを述べた記述、作り方の手順・必要な道具・寸法の記述も同じだ。この記事には、作り方を書かない。
以前の記事には、自作したストーブを使ってみた様子や、メリット・デメリットの感想もあった。確かめられる根拠のない体験談だったため、これも取り下げる。火が出ないときの対処や、風防を使うとよいという助言の記述も、同じ理由で取り下げる。
アルコールストーブは、燃料を入れて火をつけるだけの単純な道具に見える。しかし、後で見るように、メーカーや消防の資料は、炎の見えにくさや給油の事故、使う場所について、はっきりした注意を出している。
メーカーの注意書きは、メーカーが作った製品についてのものだ
今回確認した、イワタニ・プリムス(トランギアの日本の窓口)、トランギア本社、エバニュー、東京消防庁、NITEの資料には、自作のアルコールストーブの作り方や、自作品の安全性について書いた部分は見つからなかった。つまり、確認した範囲では、自作品について、メーカーが示した使い方や注意は見つからなかった。消費者庁、国民生活センター、消防庁の注意喚起も探したが、自作のアルコールストーブを扱ったものは見つからなかった。
メーカーの取扱説明書や注意書きは、そのメーカーが作った製品の使い方を説明するものだ。たとえばトランギアは、製品ページで、タンク2/3の注入量(約70ml)で約25分間燃焼し、使用燃料はエチルアルコールとメチルアルコールで、使用には純正のゴトク(五徳)が必要だと書いている。この数字や条件は、トランギアのバーナーについてのものだ。別の形のストーブにそのまま当てはまるとは、どの資料も書いていない。
これは、このサイトの考えだ。自作品には、メーカーの説明書も、メーカーが定めた燃料の量も、使える五徳の指定も無い。メーカーの注意書きを読んでも、自作品がその条件に合っているかを確かめる方法が無い。だから、勧めない。
炎は見えにくい。耐熱手袋と長い柄のライターがメーカーの案内
東京消防庁は、アルコールストーブの炎についてこう説明している。
アルコールの炎は青白く、燃えていても明るい場所では見えにくいのが特徴です。
エバニューも、使用上の注意に「アルコールストーブの炎は日中とても見えづらく、火傷の危険性があります。必ず耐熱手袋などで保護したうえでご使用ください。」と書いている。点火には「長い柄のライター」を勧めている。
炎の色にも注意がある。エバニューは「使用する燃料に水分や不純物が含まれていると赤い炎が出てしまいます」と書く。少量の燃料を入れたときに周囲にこぼれると、点火時に大きな炎が上がる場合があるので、特に注意するようにとも書いている。
東京消防庁は、アルコールは蒸発しやすく低所に滞留し、その蒸気と空気が混合したものは火種があると引火するおそれがある、とも説明している。炎が見えないうえ、燃料の蒸気にも火が移る。だから、燃えているかどうかを目で見て判断しないことが大切になる。
燃料の継ぎ足しは、完全に消火して、冷めてから
東京消防庁は、アルコールストーブの火災事例を載せている。炎が小さくなってきたため、火を消さずに燃料用アルコールを継ぎ足したところ、火の点いたアルコールが周囲に飛散して出火した、というものだ。
トランギア本社(スウェーデン)の英文ハンドブック「The Handbook 2021」の15ページには、次の注意がある。
NEVER REFILL the burner with fuel before it is completely extinguished and has cooled down.
日本語にすると、完全に消火して冷めるまでは、バーナーに燃料を補充してはいけない、という意味だ。同じページには、使い終えたらバーナーを空にし、中に燃料を入れたまま保管しないこと、燃料をボトルに戻すときは、ストーブが燃えていないこと、まだ温かくないことを100%確かめること、という注意も並んでいる。
日本のトランギアのよくあるご質問も、燃料の戻し方を次のように説明している。
燃料は使い切るか、アルコールバーナーが冷めているのを確認して燃料ボトルに戻してください。アルコールバーナーは燃料の保管容器としてはご利用できません。燃料を入れたまま保管すると、本体が破損する可能性があります。
エバニューも「運搬、保管時は中の燃料を燃やし切り、空の状態にしてください。」としている。燃料を入れたまま持ち運ぶ、という使い方は、メーカーの案内と合わない。以前の記事の、燃料を入れて持ち運べない点を欠点として挙げた記述は取り下げる。
屋外専用。テントの中では、起きている間でも使わない
エバニューは、アルコールストーブの使用上の注意の最初に「室内使用は厳禁です。必ず屋外で使用してください。」と書いている。トランギアの日本語の製品ページとよくあるご質問には、使う場所についての記載が見つからなかった。屋外専用の根拠は、エバニューとNITEの注意と、このサイトの判断だ。
NITEは、カートリッジガスこんろや燃料式ランタンなど、燃料を燃やす器具について、一酸化炭素中毒への注意を示している(2021年4月28日の資料)。アルコールストーブを名指しした文ではない。
特にテントの中やフライシート※2 の下では絶対に使用しないでください。
ここから先は、このサイトの判断だ。アルコールも燃料を燃やす器具なので、同じ考え方で使わない。寝るときだけの話ではない。起きている間でも、テントの中・前室・タープの下では使わない。風よけのつもりで、前室やタープの下に入れてもいけない。「屋外なら、どんな置き方でも安全」ということでもない。燃料の蒸気は低い所に滞留する、と東京消防庁が説明しているとおり、周りに燃えやすいものを置かない配慮は要る。
燃料は、メーカーが示すものを使う
トランギアの製品ページに書かれた使用燃料は、エチルアルコールとメチルアルコールだ。ドラッグストア等で販売されている燃料アルコールをタンクに注ぎ、気化したアルコールにマッチ等で着火して使う、と説明している。本社ハンドブックは「ONLY USE alcohol-based fuel – never petrol or other oil-based fuel.」と書き、ガソリンなどの油系の燃料を使わないよう注意している。
消毒用エタノールや酒類について、東京消防庁は、アルコール濃度が高いものは危険物に該当する場合があると説明している。燃料は、自分のストーブのメーカーが示すものだけを使う。メーカーの説明書が無い自作品は、この点でも、何を入れてよいかを確かめる先が無い。
アルコールストーブを使うなら、メーカー品を説明書どおりに
アルコールストーブを使いたいなら、メーカーの製品を選び、その取扱説明書や公式ページの注意に沿って使う。トランギアのバーナーTR-B25を例に、公式の表記を並べる。
| 項目 | 公式の記載 | 出典 |
|---|---|---|
| 燃料の量 | タンク2/3の注入量(約70ml) | 製品ページ |
| 燃焼時間 | 約25分間(「火力調整ブタを使用しない最大火力の場合」) | 製品ページ・よくある質問 |
| 使用燃料 | エチルアルコール、メチルアルコール | 製品ページ |
| 五徳 | 使用には純正のゴトクが必要 | 製品ページ |
| 価格 | 3,630円(税込・2026年10月4日時点) | 製品ページ |
手元のストーブのメーカーの案内を、使う前に必ず読む。書いていないことは、メーカーに問い合わせる。
- 屋外の開けた場所で使う。テントの中・前室・タープの下では、起きている間でも使わない
- 炎は見えにくい。耐熱手袋と、長い柄のライターを用意する
- 燃料の継ぎ足しは、完全に消火して、冷めてから
- 使い終えたら、冷めてから燃料をボトルに戻すか、燃やし切って空にする
- 燃料は、メーカーが示すものだけを使う
火力調整・燃焼時間・五徳については、アルコールストーブの火力調整の記事で、トランギア公式の説明を整理している。

情報源
- イワタニ・プリムス トランギア「アルコールバーナー TR-B25」製品ページ https://www.iwatani-primus.co.jp/products/trangia/burner/tr_b25.html(2026年10月4日に閲覧)
- イワタニ・プリムス「よくあるご質問」(トランギアの項) https://www.iwatani-primus.co.jp/support/faq/index.html(2026年10月4日に閲覧)
- トランギア本社「The Handbook 2021」(英文、p.15) https://trangia.se/wp-content/uploads/2021/09/The_Handbook_2021.pdf(2026年10月4日に確認)
- エバニュー「注意事項・取扱いについて」(Alcohol Stoveの項) https://outdoor.evernew.co.jp/user_data/evernew/caution(2026年10月4日に閲覧)
- 東京消防庁「身近な危険物の事故を防ぐために」(2026年5月18日更新) https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/inf/k_week/jikken.html(2026年10月4日に閲覧)
- NITE「増加するキャンプ需要 ~初心者が守るべき注意点~」本文資料(2021年4月28日、PDF) https://www.nite.go.jp/data/000138994.pdf(2026年10月3日に閲覧、10月4日に再利用)









