針葉樹と広葉樹の薪は、同じ重さで比べると熱量はほとんど変わらない。長野県林業総合センターの資料では、乾いた木1kgあたりの発熱量は広葉樹59種の平均で19.8MJ、針葉樹12種の平均で20.8MJと、針葉樹のほうがわずかに高い。差が出るのは同じ体積で比べたときで、密度の高い広葉樹のほうが多くの熱を持つ。そして、どちらの木でも、いちばん効くのはよく乾いた薪を使うことだ。
この記事は以前、「針葉樹と広葉樹の火力の違いをロマンチカル薪ストーブで比較してみた」として、筆者がテントの中で薪ストーブを焚いて温度を測った結果を載せ、テントの中で炎を眺めて過ごす時間を勧めていた。これは誤りだった。テントの中で火を燃やすことを勧める内容だったので、実験の方法と数字はすべて取り下げる。テントの中では、寝るときだけでなく、起きている間でも薪ストーブや焚き火を使わない。
代わりに、針葉樹と広葉樹の燃え方の違いを、長野県林業総合センター、北海道立総合研究機構(道総研)林産試験場、岐阜県森林研究所の資料と、ロマンチカル薪ストーブのメーカーである新保製作所の公式サイトで確かめて書き直した。ここに書いた数字と注意は、2026年10月1日にそれぞれの資料で確認したものだ。
テントの中で薪ストーブを焚いた実験は取り下げる|起きている間でもテントの中では使わない
テントの中で火を燃やすこと自体を、公的機関はしないよう呼びかけている。
| 発表元・資料 | 日付 | 書かれていること(原文) |
|---|---|---|
| NITE(製品評価技術基盤機構)プレスリリース「増加するキャンプ需要~初心者が守るべき注意点~」 | 2021年4月28日 | 「テントの中などの換気が不十分な場所でたき火をしたり、ガスカートリッジこんろやポータブルストーブ、ランタンなどを使用したりすると、一酸化炭素中毒に至るおそれがあります。必ず屋外の風通しのよい場所で使用してください。」 |
| NITE 製品安全情報マガジン Vol.423「一酸化炭素中毒の事故」 | 2023年2月28日号 | 「テント内や車内などでは、石油ストーブなどの石油器具やガスこんろなどのガス器具は使用しないでください。一酸化炭素中毒や酸欠によって窒息し、死亡するおそれがあります。」 |
| 消費者庁「行楽シーズン到来!安全にレジャーを楽しみましょう」 | 2023年4月27日 | 「テントの中などの換気が不十分な場所で、たき火やこんろ、ランタンなどを燃焼させると、一酸化炭素中毒に至るおそれがあります。必ず屋外の風通しのよい場所で使用してください。」 |
薪を燃やすことについては、NITEがプレスリリースの本文資料で実験結果を示している。2ルームサイズのテントの中でたき火をしたところ、「約 9 分で濃度が 200ppm を超えました」。資料は「特に、たき火では多くの一酸化炭素が排出される場合があるので、注意が必要です」とも書いている。
どの資料にも、「煙突があれば」「入口を開けておけば」「起きている間なら」テントの中で使ってよい、という例外は書かれていない。テントの中のストーブについてはテント内のストーブについての記事に詳しくまとめている。
以前の記事の温度の数字は、テントの中で測ったものなので載せない。薪の含水率の測定値も、どこで測ったのかを本文から確かめられないので使わない。以下は、公的な研究機関の資料で確かめられることだけで書く。
重さあたりの発熱量は、針葉樹と広葉樹でほとんど変わらない
長野県林業総合センターの技術情報No.103「薪ストーブと薪の燃焼・薪割り」(2000年3月)は、乾いた木(全乾材)1kgあたりの発熱量は「樹種による違いは少なく」と書いている。北海道林産技術普及協会の「ウッディエイジ」2021年9月号に道総研林産試験場が書いた「薪の燃焼性能について」も、同じ傾向の数字を出している。
| 資料 | 針葉樹 | 広葉樹 |
|---|---|---|
| 長野県林業総合センター(全乾材1kgあたり) | カラマツ 20.6MJ/kg、針葉樹12種の平均 20.8MJ/kg | ナラ 19.7MJ/kg、広葉樹59種の平均 19.8MJ/kg |
| 道総研林産試験場(含水率0%の全乾状態に換算した総発熱量) | 20MJ/kg | 19MJ/kg |
どちらの資料も、重さあたりでは針葉樹のほうが「若干」高いとしている。長野県の資料は、その差は「木材組織とは関係なく、木材成分による違い」とされている、と説明している。
ただし、これは水分を含まない状態の数字だ。長野県の資料は、ふだん使う薪は水分を含み、ロスもあるので「これよりかなり低い数値」になり、含水率によって発熱量が大きく違うので「簡単に比較はできません」と添えている。
同じ体積なら、広葉樹のほうが熱を多く持つ
「広葉樹のほうが火力が強い」と言われる理由は、密度にある。同じかさの薪で比べると、重い広葉樹のほうが中身が多いからだ。
道総研林産試験場の資料は、上の全乾状態の総発熱量を、全乾密度を仮に針葉樹0.4g/cm3、広葉樹0.5g/cm3と置いて体積あたりに換算している。計算すると、1リットルあたり針葉樹8.0MJ、広葉樹9.5MJになり、「容積あたりの総発熱量では広葉樹の方が高くなります」。水分を含まない状態での計算値なので、ふだん使う薪の値ではない。
長野県の資料は、薪にはナラなどの広葉樹がよいとされ、針葉樹があまり好まれない理由を、広葉樹のほうが「材積当り発熱量では優れており、火持ちも良いことと、針葉樹はススが多く出るため」だと思われる、としている。そのうえで、「贅沢を言わなければ針葉樹でも全くかまいません」とも書いている。
キャンプに持っていく薪をかさ(体積)で考えるなら、同じかさで熱を多く持つのは広葉樹だ。重さで考えるなら、熱量はほとんど変わらない。
針葉樹は火がつきやすく、広葉樹は火持ちがよいとされる|ただし「一概には言えない」
道総研林産試験場の資料は、板状の木材で調べた研究を引いて、木材の着火時間は「木材の密度に比例する」と紹介している。そのため「針葉樹の密度は広葉樹と比較して小さいので、着火用の薪としては針葉樹の方がよく用いられる傾向があります」。火をつけやすくするには、細い薪、密度の小さい薪、乾燥した薪を使うことが重要だ、としている。
火持ちについては、長野県の資料が「燃焼速度は密度と関係があり、例外もありますが概ね高密度の材ほど遅い傾向にあります」と書く。ただし「その他に材の組織構造等多くの要因があり、一概には言えません」とも添えている。道総研の資料も、組織構造や化学成分の違いで原理から外れる樹種があるので、「一概に広葉樹の薪の火保ちが針葉樹と比較すると良いとは言い切れないことがあります」としている。
まとめると、次のように使い分けるのが資料に沿った考え方になる。
- 焚き付け:密度の小さい針葉樹の細い薪
- 火が安定してから:体積あたりの熱量が多い広葉樹
- どちらでも:よく乾いたもの(次の見出し)
樹種より大事なのは乾燥|含水率20%以下が目安
道総研林産試験場の資料は、「重要なのは、樹種よりも十分乾燥させた薪を使用することでしょう」と書いている。乾いた薪は軽く、火がつくのも速く、「特にマツ系の樹種でも、すすの発生が少なくなります」という。
乾き具合の目安は、含水率20%以下とされる(岐阜県森林研究所・新保製作所)。道総研も、使うときの薪の含水率を15~20%程度とみている。
- 岐阜県森林研究所「針葉樹薪の乾燥過程を調べました」(森林のたより2013年12月号):「薪ストーブ用の薪では、含水率は20%以下が良いとされています」。伐ったばかりのスギやヒノキは50%以上ある
- 新保製作所のよくある質問:薪は「よく乾いている薪です。水分計ではかると20%以下がよいです」
- 道総研林産試験場:使うときの薪の含水率は15~20%程度と考えられ、そのときの総発熱量は16~18MJ/kg程度になる
どのくらい乾かせばよいかについて、岐阜県森林研究所はスギの間伐材の薪を軒下と屋外で積んで調べ、約2か月後には7割以上の薪が20%以下になったと報告している。結論は、針葉樹の間伐材の薪は、20%以下になるまで「スギで3ヶ月以上、ヒノキで4ヶ月以上は必要と思われます」。ただし、乾かす場所や時期、天候で条件は違うとしている。40℃に保った装置での試験では、丸太のままより半割り、半割りより四つ割りの薪のほうが早く乾くことも確かめている。
新保製作所は、割った薪を「最低1年」乾燥させるよう書き、保管場所は「雨や雪がかからないところ」がよいとしている。キャンプ場や店で薪を買うときも、湿った薪や雨ざらしの薪は避けたい。
針葉樹を薪ストーブで燃やすなら、すすと爆ぜに気をつける
針葉樹が薪ストーブで使えないわけではない。新保製作所は、薪ストーブに最適なのは「ヤニの量が少ない広葉樹」としつつ、針葉樹も「不完全燃焼を避けて使うとか、煙突掃除をこまめに行うなど、使用する心がけがあれば十分に薪として使えます」と書いている。
長野県の資料は、注意点を2つ挙げている。
- 爆ぜる:「特にカラマツは爆ぜるため、蓋を開けた状態での燃やし方はできません」
- すす:すすが煙道内に厚く付くと、火がついた場合に「煙突が過熱し危険です」。煙突の掃除を少しこまめにする必要がある
薪以外のものを燃やさないことも大事だ。新保製作所は、石油系の接着剤を使った合板や集積材(原文の表記)、塗料のついた建材は異常高温になるのでやめるよう書き、竹は「はぜるので、やめた方がいいです」としている。紙や段ボールは焚き付けにはよいが、たくさん続けて燃やすと煙突が詰まるという。
ロマンチカル薪ストーブは今も受注生産|メーカーの設置場所の表示は「一般家屋」など、他の利用方法に「キャンプ」
以前の記事で使ったロマンチカル薪ストーブは、北海道小樽市の新保製作所が今も公式通販で受注生産している。2026年10月1日時点の公式の表示は次のとおり。
| 製品 | 価格(税込) | 主な仕様 |
|---|---|---|
| ロマンチカル薪ストーブ煙突上出し/煙突横出し | 59,500円~85,000円(脚・ピザオーブン・カラーなどの選択で変わる) | 本体サイズ 奥行665×巾380×390mm、重量14.8kg(ピザオーブン付き18.5kg)、ボンデ鋼板0.8mm、煙突径106mm、最大薪長さ500mm、窓は耐熱ガラス。煙突は別売り。受注生産で発送まで約2週間 |
| ロマンチカル薪ストーブ opposite(扉と煙突の差込口が通常と左右逆) | 61,500円~80,000円 |
メーカーは、設置場所を「一般家屋・別荘・作業場・小屋・セカンドハウス・古民家など」、他の利用方法を「アウトドアストーブ(庭先・キャンプ・災害時の暖房・調理として)」と表示している。新保製作所のよくある質問は、屋内・屋外「どちらにも使うことができます」と答えているが、ここでいう屋内は、明治の頃から暖房に使われてきた家のことだ。
家の中で使える薪ストーブだから、テントの中でも使える、という意味ではない。テントは建物ではなく、上の公的機関の呼びかけに、置き方の工夫で使ってよくなるという例外はない。キャンプで使うのは屋外だけにする。キャンプ向けの薪ストーブの選び方と、各メーカーの使用場所の表示は冬キャンプの薪ストーブの記事にまとめている。
焚き火も薪ストーブも屋外で、テントから離す|火から目を離さず、完全に消してから離れる
屋外で使う場合も、置き場所には気をつけたい。NITEの本文資料は「テントの外で使用している場合でも風向きなどの条件次第ではテント内に燃焼した空気が滞留することがあります」と書いている。テントの入口のそばやタープの下は、置き場所として扱わない。
消防庁は、屋外で火を扱うときに年間を通じて注意する点として、次のようなことを挙げている(ほかに「たき火や火入れは複数人で行う」なども)。
- 乾燥・強風の日は火を使わない
- 火から目を離さない
- 消火用の水を準備する
- 使用後は完全に消火する
林野庁も「たき火等火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火すること」と呼びかけている。市町村が林野火災注意報・警報を出しているときは、屋外での火の使用を控える、または禁止される。
薪ストーブ本体の注意として、新保製作所は「燃焼時の薪ストーブ本体、煙突にさわらないで下さい。やけどをします」「可燃物(洗濯物、カーテン等)や爆発物(スプレー缶等)を薪ストーブの近くに置かないで下さい」とし、近くに消火器を置くよう書いている。火の粉は、空調口から、また扉を開けたときに薪がはぜて飛ぶという。焚き火台やストーブは、それぞれの取扱説明書の注意どおりに使う。
寝る前には火を完全に消す。ただし、これは起きている間ならテントの中で使ってよいという意味ではない。屋外の風通しのよい場所で使うよう呼びかけられていることは、だからテントの中なら安全、という意味でもない。消費者庁は「テントの設営場所、火の取扱いや道具の使い方等を事前に確認しておきましょう」としている。焚き火や薪ストーブがどこまで認められているかは、キャンプ場のルールを先に確かめる。夜の寒さは、テントの中で火を使わず、寝袋・マット・服装で防ぐ(冬キャンプの暖房の記事)。

情報源
- 長野県林業総合センター「技術情報No.103 薪ストーブと薪の燃焼・薪割り」2000年3月 https://www.pref.nagano.lg.jp/ringyosogo/seika/gijyutsu/documents/103-4.pdf(2026年10月1日に閲覧)
- 道総研林産試験場「薪の燃焼性能について」(北海道林産技術普及協会「ウッディエイジ」2021年9月号) https://rinsan-fukyu.jp/wp-content/uploads/woodyage/2021/202109C.pdf(2026年10月1日に閲覧)
- 岐阜県森林研究所「針葉樹薪の乾燥過程を調べました」(森林のたより2013年12月号) https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/kankyou/mori131201.html(2026年10月1日に閲覧)
- 新保製作所「ロマンチカル薪ストーブ煙突上出し」 https://www.maki-stove.jp/item/romanchical-stove/、「ロマンチカル薪ストーブ煙突横出し」 https://www.maki-stove.jp/item/romanchical-stove-yoko/、「ロマンチカル薪ストーブ opposite」 https://www.maki-stove.jp/item/romanchical-stove-oppsite/(2026年10月1日に閲覧)
- 新保製作所「Q&A」 https://www.maki-stove.jp/faq.html、「薪燃料」 https://www.maki-stove.jp/firewoodfuel.html、「薪ストーブを安全に使用するための注意」 https://www.maki-stove.jp/safely.html(2026年10月1日に閲覧)
- NITE(製品評価技術基盤機構)プレスリリース「増加するキャンプ需要~初心者が守るべき注意点~」2021年4月28日 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2021fy/prs210428.html、本文資料(PDF) https://www.nite.go.jp/data/000138994.pdf(2026年10月1日に閲覧)
- NITE「製品安全情報マガジン Vol.423 2月28日号『一酸化炭素中毒の事故』」2023年2月28日 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/mailmagazin/2022fy/vol423_230228.html(2026年10月1日に閲覧)
- 消費者庁「行楽シーズン到来!安全にレジャーを楽しみましょう」2023年4月27日 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_069/(2026年10月1日に閲覧)
- 消防庁「林野火災への備え」 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/rinyakasai/sonae.html(2026年10月1日に閲覧)
- 林野庁「山火事予防に当たって注意することは?」(令和8年3月24日更新) https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_4.html(2026年10月1日に閲覧)









