秋のキャンプ場や林道で見かけたキノコは、採らない、食べない。厚生労働省の食中毒統計では、2025年(令和7年)に原因食品が「きのこ類」の食中毒は16件、患者は46人だった。16件はすべて10月と11月に起きている。
消費者庁は2020年の注意喚起で、野生のキノコによる食中毒は「特に9月から11月にかけて、多く発生しています」としたうえで、「知らないキノコは絶対に『採らない』『食べない』『売らない』『人にあげない』!」と呼びかけている。厚生労働省も「食用と確実に判断できないキノコは、絶対に採らない、食べない、売らない、人にあげないようにしましょう。」とし、農林水産省も「食用であると確実に判断できない野生きのこは、採らない、食べない、売らない、人にあげないようにしてください。」と求めている。
ここに書いた数字と注意の文言は、厚生労働省、消費者庁、農林水産省、林野庁、食品安全委員会、福島県、東京都の公式サイトと資料に載っているものだ。

2025年のきのこ類の食中毒は16件・46人、すべて10〜11月だった
厚労省の「令和7年 原因食品別月別食中毒発生状況」で、「きのこ類」の行は次のとおりだ。死者の欄は「-」で、死者は計上されていない。
| 月 | 事件数 | 患者数 |
|---|---|---|
| 1〜9月 | – | – |
| 10月 | 10件 | 27人 |
| 11月 | 6件 | 19人 |
| 12月 | – | – |
| 年間 | 16件 | 46人 |
死者が出ない年ばかりではない。厚労省の集計「毒キノコによる食中毒発生状況」(月別・自治体別)では、平成28年〜令和7年の10年間に毒キノコによる食中毒は213件、患者546人、死者4人だった。厚労省のリーフレット「毒キノコに要注意!」の種類別の表は合計215件、患者548人、死者5人としているが、これは2種類のキノコが疑われた事例を両方に計上した分(令和3年・令和6年)を含む数字で、集計の合計より2件・2人・死者1人多い。
2026年もすでに報告がある。厚労省の「令和8年食中毒発生事例(速報)」(10月1日までの報告分)には、原因食品の欄に「キノコ」「きのこ」とあり、病因物質が「植物性自然毒」の事例が2件載っている。盛岡市の「9月3日(木)に調理・喫食したキノコの炒め物」(患者4人)と、鳥取県の「きのこごはん」(患者3人)だ。どちらもキノコの種類は書かれていない。
中毒の多くは、食用によく似た毒キノコの誤食
消費者庁は、キノコによる食中毒は「食用のキノコと外見がよく似た毒キノコを誤って食べてしまう事が主な原因です。」としている。厚労省が2026年8月28日に自治体へ出した事務連絡も、令和7年は「ツキヨタケ、ドクササコ、クサウラベニタケ等の毒キノコの誤食による食中毒事例が報告されています」と書いている。
同じ事務連絡に載っている令和7年の事例は、いずれも家庭で起きている。
| 発生日 | 場所 | 原因 | 患者 |
|---|---|---|---|
| 令和7年10月9日 | 山梨県、家庭 | ゆでたキノコ(クサウラベニタケ(推定))の大根おろしがけ | 3名 |
| 令和7年11月2日 | 静岡県、家庭 | ツキヨタケ入りの麺料理 | 11名 |
| 令和7年11月13日 | 新潟県、家庭 | ドクササコ入りのけんちん汁、みそ汁 | 4名 |
静岡県の事例の概要は「山林で採取した野生キノコを調理したものを喫食したことで発症した。」で、患者には1歳の子どもも含まれる。新潟県の事例も「家族で発症した」とある。採った本人だけでなく、一緒に食べた人にも被害が広がる。
農林水産省は、ツキヨタケは「ムキタケやヒラタケ等」と、クサウラベニタケは「ウラベニホテイシメジやハタケシメジ等」と間違えられやすいとしている。厚労省のページは、ツキヨタケと間違えやすいキノコにシイタケも挙げている。
「見分け方」に頼らない。言い伝えは誤り
「ツキヨタケとシイタケの見分け方」のような情報もあるが、この記事では特徴の比べ方は書かない。農林水産省は理由をこう説明している。
食用きのこと間違えられやすい毒きのこは、見た目が似ているだけでなく、食用きのこと同じ場所に生えていることがあり、見分けることが困難な場合があります。
続けて「混ざってしまった場合、後から見分けることは困難です。少しでも疑わしいと感じた野生きのこは採らないでください。」としている。食品安全委員会も「外見で毒キノコを見分けることは困難です。」と書く。
昔からの言い伝えも当てにならない。消費者庁は「『茎が縦に裂けるキノコは食べられる』、『毒キノコは派手な色をしている』等の言い伝えは誤りです。」としている。福島県も「虫が食べているキノコは食べられる」「ナスと一緒に料理すれば食べられる」などを挙げ、「全部誤りです」と書いている。
スマートフォンでの検索も、判断の決め手にはならない。東京都は「毒キノコによる食中毒防止5か条」の中で「図鑑の絵やインターネットの写真にあてはめて、勝手に鑑定しない。」とし、「スマートフォンの画像検索機能を使って判断し、毒キノコを間違って食べた食中毒が都内で実際に起きています。」と注意している。
以前は食べられるとされていたキノコが、後から危ないと分かった例もある。農林水産省は、スギヒラタケを「食べると急性脳症のおそれがあることが判明した」として、食べないよう呼びかけている。
キャンプ場で見つけても、採らない・食べない・人にあげない
キャンプ場の場内や周りの林でキノコを見つけても、採らずにそのままにしておく。子どもが拾ってきたときも、料理に使わない。厚労省は、カエンタケについて「触れるだけでも炎症を起こし、食べると死亡する場合もあります。」としている。知らないキノコには、手を出さないのがいちばんだ。
もらったキノコにも気をつけたい。農林水産省は「知人から譲り受けた野生きのこによる食中毒も発生しています。」とし、疑わしい場合は食べないよう求めている。農産物直売所で毒きのこが誤って食用として売られ、買って食べた人に食中毒が起きた例もあるという。
林野庁は「山菜やきのこを採っても良い場所かどうかご確認ください。」としている。キャンプ場の敷地や周辺の山林で採取できるかは、利用規約を読むか、管理棟に確かめる。採ってよい場所でも、確実に判断できないキノコは採らない。この記事では、個別の施設や公園の決まりは扱わない。
放射性物質の制限もある。農林水産省は「放射性セシウムが原因で野生きのこの採取、出荷等が制限されている地域があります」として、最新の出荷制限情報を確認するよう求めている。たとえば福島県は、一部の地域・種類を除き、県内で採取される野生キノコには国から出荷制限又は摂取制限が指示されている、としている。
食べて具合が悪くなったら、すぐ医療機関へ。残ったキノコを持っていく
誤って食べてしまい、体調がおかしいと感じたら、様子を見ずに医療機関を受診する。消費者庁は「体調に異常を感じたら、直ちに医療機関を受診しましょう。」、厚労省のリーフレットは「キノコを食べて体調が悪くなったら、すぐに医師の診察を!」としている。
受診するときは、残ったキノコを持っていく。福島県は次のように書いている。
原因と疑われるキノコの残品(食べ残し・嘔吐物等を含む。)がある場合は、受診の際に持っていき、治療の参考にしてもらってください。
東京都も「食べたキノコが残っている場合は、持参してください。治療の参考になります。」としている。キャンプ場で調理した場合も、鍋や皿に残った分を捨てずに持参できるようにしておく。
症状が出るまでの時間は、キノコによって違う。厚労省のリーフレットでは、ツキヨタケは「食後30分-1時間程度」で嘔吐や下痢などが起きる。一方、ドクツルタケは「食後6-24時間程度」でコレラ様の症状が出ていったんおさまり、その後24〜72時間程度で肝臓や腎臓の障害が現れ、死亡する場合があるとしている。いったん症状がおさまっても、後から重い症状が出るキノコがある。福島県は「もしも中毒を起こした場合は、早急に医師の診断をうけることが大切です。」としている。
秋キャンプは「採らない」を前提に計画する
キノコ料理を楽しみたいなら、店で売っている栽培キノコを持っていけば足りる。現地で見つけたキノコを料理に加える必要はない。ただし東京都は、「シイタケなど、食用として栽培されたキノコでも、生や加熱が不十分な状態で食べると、アレルギー症状や食中毒症状が起こることがあります。」としている。買ったキノコも、しっかり火を通して食べる。
秋の山では、熊や道迷いにも注意がいる。秋キャンプの熊対策や、2026年夏山の遭難の状況と秋山の注意点もあわせて読んでおきたい。
知らないキノコは「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」。見分け方を覚えるより、この4つを守るほうが確実だ。
情報源
- 厚生労働省「令和7年食中毒発生状況」(Excel、「③原因食品別発生状況」シート) https://www.mhlw.go.jp/content/001681441.xlsx(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省「令和8年食中毒発生事例(速報:令和8年10月1日までに厚生労働省に報告のあった事例)」(Excel) https://www.mhlw.go.jp/content/001717468.xlsx(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省「食中毒統計資料」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省「毒キノコによる食中毒に注意しましょう」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kinoko/index.html(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省 事務連絡「毒キノコによる食中毒の注意喚起について」(令和8年8月28日、PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/001743834.pdf(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省「毒キノコによる食中毒発生状況(月別発生状況・種類別発生状況・自治体別発生状況)」(Excel) https://www.mhlw.go.jp/content/001483891.xlsx(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省 リーフレット「毒キノコに要注意!」(PDF) https://www.mhlw.go.jp/content/001298254.pdf(2026年10月3日に閲覧)
- 厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html(2026年10月3日に閲覧)
- 消費者庁「毒キノコによる食中毒に注意!」(2020年9月25日) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_039/(2026年10月3日に閲覧)
- 農林水産省「野生きのこによる食中毒を防ぐために」(最終更新日 2024年7月12日) https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/rinsanbutsu/yaseikinoko/yaseikinoko.html(2026年10月3日に閲覧)
- 林野庁「野生の山菜やきのこ採取にあたっての留意点」 https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/kinoko/sansai.html(2026年10月3日に閲覧)
- 食品安全委員会「毒キノコによる食中毒にご注意ください」 https://www.fsc.go.jp/sonota/kinoko_tyudoku.html(2026年10月3日に閲覧)
- 福島県「毒キノコによる食中毒とキノコの採取地域にご注意ください」(2026年9月15日更新) https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045e/kinoko-tyudoku.html(2026年10月3日に閲覧)
- 東京都保健医療局「キノコ食中毒」 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kinoko/tyudoku.html(2026年10月3日に閲覧)









