アルコールストーブで焼肉ができるのか。結論から言うと、今回確認したメーカー公式の資料に、アルコールバーナーで焼肉をすることを勧める記述は見つからなかった。エバニューは作れるものを「お湯で調理できるもの」と書いている。トランギアの公式サイトにはフライパンやメスティンで肉や魚を焼くレシピもあるが、熱源がアルコールバーナーとは書かれていない。
焼肉のときに特に気をつけたいのは、火力の弱さよりも、アルコールの炎が見えにくいことだ。東京消防庁は、炎が小さくなったので火を消さずに燃料を継ぎ足し、火の点いたアルコールが飛び散って出火した事故例を載せている。
ここに書いた文言は、イワタニ・プリムス(トランギア)、エバニュー、東京消防庁、NITE(製品評価技術基盤機構)の公式ページに載っているものだ。いずれも2026年10月4日に確認した。
焼肉に使えると書いた資料は、確認できた範囲になかった
エバニューのアルコールストーブ特集は、できる料理をこう書いている。
コーヒー、お茶、スープなどの温かい飲み物や、カップラーメンなど「お湯で調理できるもの」なら何でも作れます。
同じページは、デメリットとして「ガスバーナーに比べると火力が強くないので、お湯が沸くまでの時間がやや長くなります。」とも書いている。アルコールバーナーで焼肉をすることを名指しして、向く、向かないと書いた記載は、確認できた資料にない。
トランギアの日本公式レシピには、フライパンで鮭を焼く「キノコと秋鮭の蒸し焼き」や、メスティンで肉を焼く「ローストビーフ」がある。ただし手順は「火にかける」と書かれているだけで、熱源がアルコールバーナーとは書かれていない。レシピがあることを、アルコールバーナーでの焼肉を勧めている、と読んではいけない。
トランギアのアルコールバーナーTR-B25(税込3,630円)の製品ページには、「タンク2/3の注入量(約70ml)で、約25分間燃焼します。」とある。製品ページの説明画像も1枚ずつ確認したが、写っていたのは工場の作業風景、断面、炎の写真などで、注意書きの文字はなかった。
フライパンを使うときの注意は、トランギアのよくある質問にある。内側がノンスティック加工のフライパンについて、「ウインナーを少しだけ焼くなど汁気のない調理は、部分的に空焚き状態になる事がありますのでご注意ください。」と書き、「フライパンから煙が上がるようなときは、空焚きになっている可能性があります。弱火~中火でご使用下さい。」としている。これはコーティング面の剥離についての説明で、アルコールバーナーでの焼肉を勧める文ではない。
実際に焼いた経験談はここには載せない。使えるかどうかは、手元のストーブの取扱説明書と、メーカーの窓口で確かめてほしい。
屋外専用。テントの中では、起きている間でも使わない
エバニューは「アルコールストーブ 使用上の注意点」の最初に、「室内使用は厳禁です。必ず屋外で使用してください。」と書いている。
トランギアの日本語の製品ページ・よくある質問には、使う場所の記載は見つからなかった。
キャンプで気をつけたいのはテントの中だ。NITEは、カートリッジガスこんろや燃料式ランタンなど燃料を燃やす器具について、「換気の不十分な場所で使用すると、一酸化炭素が充満することで、最悪の場合死亡事故に至るおそれがあります。特にテントの中やフライシート※2 の下では絶対に使用しないでください。」と注意している(2021年4月28日の資料)。アルコールストーブを名指しした文ではないが、アルコールも燃料を燃やす器具で、一酸化炭素が出る点は同じだ。プリムスもガス燃焼器具について「屋内、テント内、車内では絶対に使用しないで下さい。」と書いている。
寝るときだけの話ではない。起きている間でも、テントの中や車の中では使わない。屋外で使うときも、風よけのつもりでテントの前室やタープの下へ入れてはいけない。屋外ならどんな使い方でも安全、ということではない。
炎が見えにくい。燃えているかどうか、目で確かめにくい
東京消防庁は、アルコールについてこう説明している。
アルコールの炎は青白く、燃えていても明るい場所では見えにくいのが特徴です。
エバニューも「アルコールストーブの炎は日中とても見えづらく、火傷の危険性があります。必ず耐熱手袋などで保護したうえでご使用ください。」と書いている。点火についても、「少量の燃料を注入した時、周囲にこぼれてしまった際は、点火時に大きな炎が上がる場合がありますので、特に注意してください。」「点火の際は、長い柄のライターを使用するのがお勧めです。」としている。
焼肉では、肉に目が行きやすい。ストーブの炎を確かめるのを後回しにしない。炎の色だけで、燃えているかどうかを判断しない。エバニューは「炎の色は必ずしも青色とは限りません。使用する燃料に水分や不純物が含まれていると赤い炎が出てしまいます」と書いている。
消火についてトランギアは、「消火時は消火用&火力調整用蓋のスライド部を完全に閉じタンクに被せます。被せても炎が消えなかった場合は吹き消すなどして完全に消火したことを確認してください。」としている。
燃料の継ぎ足しで出火した事故がある。火を消して、冷めるのを待つ
東京消防庁が載せている火災事例は次のとおりだ。
使用中のアルコールストーブの炎が小さくなってきたため、火を消さずに燃料用アルコールを継ぎ足したところ、火の点いたアルコールが周囲に飛散して出火しました。
焼いている途中で火が弱くなると、足したくなる。上の事例は、まさにその場面だ。足すなら、完全に消火して、バーナーが冷めてからにする。トランギアが示す消火の手順は、前の見出しのとおりだ。
冷めるまで待つ点は、トランギア本社(スウェーデン)の英文ハンドブック「The Handbook 2021」に書かれている。15ページに「NEVER REFILL the burner with fuel before it is completely extinguished and has cooled down.」とあり、9ページにも、調理の途中で燃料が切れたら素手で楽に持てるくらい冷めるまで待ってから給油する、という趣旨の注意がある。日本語のイワタニ・プリムスの資料では、継ぎ足しについて同じ内容は見つからなかった。
トランギアは、燃料の扱いについて次のことも書いている。
- 使用燃料は「エチルアルコール、メチルアルコール」(製品ページ)
- 「燃料は使い切るか、アルコールバーナーが冷めているのを確認して燃料ボトルに戻してください。アルコールバーナーは燃料の保管容器としてはご利用できません。」(よくある質問)
- フューエルボトルについて「アルコール燃料専用になります。」(よくある質問)
エバニューも「運搬、保管時は中の燃料を燃やし切り、空の状態にしてください。」としている。
風防と五徳は、メーカーの書き方が分かれる
風が強いと炎が流れる。エバニューは風防(フーボー)を使う方法を示している。「炎が風で揺らぐのを防ぎ、クッカーにしっかり熱が伝わるようにします。」と書いている。直接カップを置くと火力が弱くなることと、風で炎が流れることについて、ゴトク・風防の併用で快適に使えるとしている。
一方、トランギアはよくある質問で次のように答えている。
トランギアのゴトクをお勧めいたします。他社製のゴトクや風防兼用ゴトクをご使用になるとまれに、異常燃焼などによりゴトクやアルコールバーナー本体に変形や溶解などの影響を与えることがあります。
製品ページにも「使用には純正のゴトクが必要です。」とある。つまり、トランギアのバーナーに市販の風防兼用ゴトクを組み合わせることは、トランギア自身が勧めていない。エバニューの特集は、自社のアルコールストーブの付属品として風防を紹介している。ここで言えるのは、メーカーごとに指定が違うので、手元のストーブのメーカーの案内に従う、ということだ。風防があるから安全、とはどの資料も書いていない。
火力調整について、トランギアの製品ページは「火力調整には消火用&火力調整用蓋を使用します。茶色いスライド部の開き具合を調整し、タンクに被せて炎の大きさを調整します。」と書いている。ゴトクや風防の組み合わせは、上のトランギアの注意に従ってほしい。メーカーの資料がない自作のストーブは、この記事では扱わない。
「鉄板・焼き網は禁止」はガスのシングルバーナーの話。混同しない
「焼肉 バーナー 鉄板」で調べると、プリムスの注意が目に入る。ただしこれはガスカートリッジを使うシングルバーナーの話だ。
シングルバーナーにセラミック製品、鉄板や焼き網等を使用しないで下さい。
理由は「輻射熱が直接ガスカートリッジに当たるためカートリッジが加熱され、内部圧力が急激に上昇し爆発します」とされている。同じページには「バーナーを風防、天ぷらガード、積石等で絶対に囲まないで下さい。」もある。これらはボンベを持つ器具の注意で、アルコールストーブにそのまま当てはまるとは書かれていない。逆に、アルコールストーブなら鉄板を載せてよいという意味でもない。
使う前に確かめること
- 手元のストーブの取扱説明書で、使える調理器具・火力・燃料を確認する(書いていなければメーカーに問い合わせる)
- 屋外の開けた平らな場所で使う。テントの中・車の中・前室では、起きている間でも使わない
- 燃えやすいものの近くに置かない。炎は見えにくいので、耐熱手袋を用意する
- 継ぎ足しは、完全に消火して、ストーブが冷めてから
- 焼肉に使えるかは、メーカーが書いていない限り、うのみにしない。迷ったら使わない
情報源
- イワタニ・プリムス トランギア「アルコールバーナー TR-B25」製品ページ https://www.iwatani-primus.co.jp/products/trangia/burner/tr_b25.html(2026年10月4日に閲覧)
- イワタニ・プリムス「よくあるご質問」(トランギア・コッヘルの項) https://www.iwatani-primus.co.jp/support/faq/index.html(2026年10月4日に閲覧)
- トランギア本社(スウェーデン)「The Handbook 2021」(英文、PDF、9ページ・15ページ) https://trangia.se/wp-content/uploads/2021/09/The_Handbook_2021.pdf(2026年10月4日に閲覧)
- イワタニ・プリムス トランギア「レシピ」 https://www.iwatani-primus.co.jp/products/trangia/recipe/(2026年10月4日に閲覧)
- イワタニ・プリムス「ガス燃焼器具の安全な使い方(注意喚起)」 https://www.iwatani-primus.co.jp/camp.html(2026年10月4日に閲覧)
- エバニュー「エバニュー アルコールストーブ」特集 https://outdoor.evernew.co.jp/feature/alcoholstove(2026年10月4日に閲覧)
- エバニュー「注意事項・取扱いについて」(Alcohol Stoveの項) https://outdoor.evernew.co.jp/user_data/evernew/caution(2026年10月4日に閲覧)
- 東京消防庁「身近な危険物の事故を防ぐために」(2026年5月18日更新) https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/inf/k_week/jikken.html(2026年10月4日に閲覧)
- NITE「増加するキャンプ需要 ~初心者が守るべき注意点~」本文資料(2021年4月28日、PDF) https://www.nite.go.jp/data/000138994.pdf(2026年10月3日に閲覧、10月4日に再利用)









